近大流コミュニケーション戦略〜近畿大学の広報経営の舞台裏〜
18歳年齢人口が、1992年の205万人から2018年には118万人に減少し、大学進学率も頭打ちになる中、2018年を境に大学進学者が減少し、私立・国立を問わずつぶれる大学がでてくるのではないかといわれてる。
ところがその中でも、志願者数を10年間で2倍にし、5年連続志願者数日本一を達成した大学がある。東京の大学でもありません、「関関同立」(関西大、関西学院大、同志社大、立命館大)と呼ばれる関西私立トップ4でもありません。世間ではその下に序されている「産近甲龍」(京都産業大、近畿大、甲南大、龍谷大)のうちの一校、近畿大学である。
いったいこの“偉業”は、どうやって成し遂げられたのか?
昨日、この動きを11年前から指揮してきた近畿大学 現総務部長の「 世耕石弘氏」の講演を聞いた。
まず2019年度の学校案内をみて、びっくり! 大阪が誇る「よしもと」色が前面に押し出され、これまでなかったフツウじゃない「近大グラフィティ」。学長のメッセージも無ければ、どこの大学も掲載する「芝生の上で留学生と語り合うイメージ写真」もない。その代わりに「近大 美女図鑑・美男図鑑」が巻頭に載せられ、「近大生のビフォーアフター」と名付けられた、入学時の写真と卒業時の写真を対比させ、いかに垢ぬけたかがわかるようなページも反響が高い。
その他、とにかく大阪流のユーモアにあふれたPR企画が目を引く。
「産近甲龍」のくくりから脱却したいという思いから「早慶近」をぶちまけておいて、「言いだした自分でもアホくさくて、笑てまうわ」とつっこんでしまう新聞広告。阪神なんば線の開通に合わせて「近畿大学への近道です。」と掲げた車内広告。ネット出願の奨励に伴って「近大へは願書請求しないでください。」と呼びかけたポスター。青のりが歯についた外国人の美女をアップにして、「オレはいま、世界から試されている。」と書かれた国際学部の新聞広告。「近大発のパチもんでんねん。」というコピーとともに映し出されている養殖ナマズのビジュアルの新聞広告――などなど。
ほんと「どこまで行くねんっ!」と、今最も目が離せない元気大学、近大。
その勢いは、少子高齢化や学生数減の大波小波に洗われる大学業界にあって突出している。 アカデミックでしがらみの多い大学において、近大はその殻を打ち破ることに成功したのである。
そんな数々のコミュニケーション戦略を仕掛けてきた世耕氏が最後に語った言葉は
「最も強い者が生き残るのではなく、
最も賢い者が生き延びるのでもない。
唯一生き残るのは、変化できる者である。」
、、、ダ―ウインの名言であった。
企業も、大学も、個人も、変化をしなければ生き残れない世の中である。